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工房便りダヨ〜ン^^;;
 

YAMAHA FG-180

2008.07.09 
 
hed
 

気づけば、前回の更新をしてからもう半年が過ぎていたのか。^^;;
今回は、ミニチュアではありません。もう12年もミニチュアギターを作り続けていますが、気がつけば実物を扱っていました。そんなことで、今回はYAMAHA FG-180のメンテナンスをレポートします。

 
FUCHIDER!?
 
 

このギターのオーナーは古い友人でもあります。以前から壊れたアコースティックギターがあり、修理してほしいと持ちかけられていました。もう40年近く弾き続け、ボディーネック共にボロボロです。ヘッドは四隅どころか欠けている部分もあり、オリジナルのペグは既に壊れていて機能していません。。こりゃ〜天下のYAMAHAのロゴマークも削らなければなりません。

そこで、どうせやるならオリジナルロゴをデザインし、オーナーの名前「渕さん」から「FUCHIDER」と命名。自作のステッカーを貼り付けることにしました。

とにかく傷だらけのギターです。ペグの交換はもちろん、ネックのリシェイプ、フレット交換、同時にポジションマークも打ち直し。ピックガードの交換、サドルブリッジを外しボディーを全面

 

再塗装し直します。ネックも相当に反ってますが、サドルでまだ調整できそうなのでネックのリセットまではしません。それにしても、これだけ弾き倒したギターですが、ここまで愛されているとは、驚きから感動さへ感じてしまいます。ちなみに、テーピングしてある箇所は、穴が開いているか、深い傷があるところです。では、細かくみてみましょう。
 
サドル
 
 

オリジナルのサドルブリッジです。割れています。長く扱っているとこのように割れが生じてくることもあります。裏側までは達していませんが、しっかりとした修理が必要な部分です。新しく作ってもいいのですが、オリジナルを残し別の方法で修繕することにします。写真は真鍮製のアンカーです。機械で削るため非常に正確にカットできます。このアンカーをサドルへ埋め込みます。金属っぽい音にはなるでしょうが、どんな音がでるか楽しみです。

 
 
 
穴埋め
 
 

サドルブリッジを外した状態は、最悪でした。ボディー側のスプルース板もささくれ状態。裏側の弦を支えるプレートはボロボロ。これじゃ弦が食い込み外しにくいでしょう。完全に穴を塞ぎ、プレートをリペアしなければなりません。工具を作り、内側からローズウッドで塞ぐことにしました。

 

埋め込むためのピースを削り出す自作カッターです。炭素鋼で作りました。焼きを入れたので右写真では黒く変色しています。左のカッターはローズウッドを円錐にカットし、尚かつセンターへ穴を開けます。これをワン行程でできるようにしました。右側はグリップを付け、内側から円錐に削り出すことができます。
 
 
円錐形にカットしたローズウッドを内側から貼り付けます。1つおきに接着して一晩寝かせ、更に残りを接着します。完全に固着するまで放置します。その間にサドルへアンカーを埋め接着し、これも完全に穴を埋めてしまいます。
 
左は裏面からの接着も終わり、表面から穴埋めしています。サドルブリッジの修理も終わり、弦が通る穴を再加工しています。真鍮のアンカーが埋まったまま、ミリングマシンで正確に穴開け作業をします。メーカーによりピンの径が異なりますが、取りあえず5mmで貫通させてしまいます。後は取り付けてから再調整です。
 
 
ネック
 
  ネックの傷み具合から、どれだけこのギターを弾いたのか想像できます。親指が収まる位置が木が痩せて削り取られたように退けができていました。全体を削り直し、ぶつけてできた外傷もある程度削除してしまいます。
 
 
傷はネック全体に渡り、塗装を突き破ったものもあり実に深刻です。指板に至っては抉れが発生しており、埋めなければなりません。ローズウッドの粉末をタイトボンドで溶き、指板へ乗せていきます。フレットを抜き取った際に生じた割れも結構でてしまい、かなり時間が掛かりそうな作業になりました。時間の経過で腐食してしまったポジションマークも総入れ替えです。
 
ヘッド
 
  FUCHIDERにすることを決めた段階では、書体もFenderに真似てデザインするつもりでいました。ところが、何故か安っぽいものになってしまい書体を変えてみることにしました。更にその下へはYAMAHA FG-180 SPECIAL CUSTOMと入れることとしOKを貰います。シールは水張りしますが、この後相当量のラッカーを重ねて段差を無くしながら、耐水ペーパーで研ぎ出していきます。これを何回も繰り返します。写真はほぼ仕上がった状態ですが、一番時間が掛かる作業です。
 
ボディー
 
ボディー下部にあるバインディングが一部脱落しているところを見つけました。矢印の間が抜け落ちてしまい、バインディングも剥がれています。見ると特殊な色合いで、手持ちには無い色です。う〜んどうしよう。閃いたのは、紙を着色してラッカーで固めてしまう方法です。
 
色合いを調整し、埋め付け作業をしています。接着はセメダインでもできますが、今回は専用の接着剤で行います。前面は既に塗装が剥がされ木肌がでています。穴埋めや傷の手当てをし、塗装を待ちます。
 
 
塗装に入りました。不要な部分をマスキングし、表面とネックだけを集中的に仕上げていきます。サイドとバックはラッカーを吹き直し、傷を塞ぐ程度にとどめます。シーラーを吹きつけ、乾いたら耐水ペーパーで研ぎ出す作業を数十回と重ねていきます。
するとどうでしょう。ピカピカになってきました。プロの方々は機械を使ってサンディングしますが、私は手作業で仕上げます。240番〜4000番までのペーパーを使い、汗だく状態でサンディングしていきます。仕上げはコンパウンドで磨き倒し。おかげで痩せました。^^;;サドルブリッジを乗せる部分の塗装を剥ぎ、やっと仕上げの準備が整ってきました。あともう少しで完成します。ここまで約二ヶ月も掛かってます。ピックガードも付きやっとギターらしくなってきましたね。
 
 
仕上げ
 
サドルブリッジを取り付ける時がやってきました。専用のクランプが無いので簡単に入手できる市販のクランプを使ってます。固着するまで一週間ほど放置します。

肝心のナットやサドルの製作風景を写真に納めることを忘れていました。気がついたら出来上がっていた。早く音を出してみたかったのです。^^;;サドルブリッジを外していることから、テンションピッチを調整しなければ
なりません。使用弦の太さなどから細かな調整をしますが、便利な道具もあるようなので次回報告します。また、ナットの加工も神経を使います。オリジナルのナットは間隔がおかしく、両サイドに異常なほど間隔が開いていて、私にはとても弾きづらく感じました。漂白していない牛骨を使いましたが、ルックス的にも音的にも、いい結果が出たと満足しております。

仕上がりは下の写真をごらんください。出来上がったものから出てきた音はもう最高!の一言。YAMAHA(FUCHIDER)だけどMartinのような音がしました。自分でも驚きです。^^;;オーナーは大喜びです。ここまでやるか!とか、イラストレーター止めてリペアーの仕事に切り替えろとも言われたその日、早速カミサンに見せたい!と自宅へ運んでいきました。^^;;よかった。
 
       
 

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